僕はまだ誰も見つけていないクソシナジーで環境を席巻することを夢見る25歳。所謂、クソデッキビルダーというやつだ。
 2年前の秋、僕は横浜で「自分が組んだデッキで勝つ」ということの喜びを知り、また勝ちきれなかった悔しさを味わった。気付けばアブザンアグロをぶん回してPPTQを行脚する僕はどこへ行ったのやら、家にバントカンパニーのカードを全部持っていながら大会には赤青のクソビートを持ち込む人間になっていった。それまでにもクソデッキを生み出しては闇に葬っていたが、僕のデッキビルドの目的はこの頃から、「自分の作品を世に発信すること」になった。

 オリジナルデッキの本質は模倣である。石田衣良という作家が昔テレビ番組で、文章を書くということは自分がそれまでに読んできた文章から組み立てていくことだというようなことを話していたが、ある意味で同じことだ。新しいものを生み出すということは容易いことではなく、オリジナリティとは、ほとんどの場合で模倣と模倣の組み合わせ方による差異以上のものを意味しない。古いデッキリストを読み漁った。僕は先人たちに強固なコンセプトやメタゲームを泳ぐ術を教わった。数々の「新作」と呼ばれるデッキはそうやって生まれてきた。

 「蛇ん詰め脳」の話をしよう。瓶詰め脳と唯々諾々を筆頭とした融合カードとのシナジーはMTG GoldfishやCFBで動画がアップされており、既に多くの人が知ることができる状態だった。僕はそれを知っていたから、最初、デッキリストに唯々諾々を入れることはしなかった。「オリジナリティ」に拘ったそれが、デッキの挙動を一度でも見たことがあれば、蛮勇であるというのは言うまでもないだろう。
 巻きつき蛇と瓶詰め脳からデッキ構築を始めた僕は、比較的早い段階できらめく願いとのシナジーに気付くことができた。瓶詰め脳は特定のマナコストを持つカードを必要とするため、マナコストが可変であることが大きな意味を持つ。願いは、このデッキにとってコロンブスの卵だった。

 既にあるテクニックの模倣と新たに見つけたシステムの融合が、蛇ん詰め脳というデッキを一段上のステージに上げた。
 それからデッキが出来上がるまでそう長い時間はかからなかったが、さらに幾つかの調整を経た。アブザンの隆盛は打撃力を、交錯の混乱は安定性を、倍増の季節からタミヨウの奥義で勝つパターンはこのデッキのプレイに明確なゴールを与えてくれた。まったく新しいコントロールデッキが完成した。

"HEBINDUMENOU"

4 Birds of Paradise
4 Winding Constrictor

4 Dream’s Grip
4 Serum Visions
4 Brain in a Jar
4 Glittering Wish
4 Muddle the Mixture
3 Baral’s Expertise
2 Doubling Season
1 Spelltwine
4 Beck/Call

3 Aether Hub
2 Botanical Sanctum
2 Breeding Pool
1 Hallowed Fountain
2 Island
4 Misty Rainforest
2 Overgrown Tomb
1 Swamp
1 Temple Garden
4 Verdant Catacombs

*Sideboard*
1 Cruel Ultimatum
1 Merciless Eviction
1 Slaughter Games
1 Supreme Verdict
1 Wear/Tear
1 Jund Charm
1 Identity Crisis
1 Maelstrom Pulse
1 Abrupt Decay
1 Dreadbore
1 Silumgar’s Command
1 Violent Ultimatum
1 Abzan Ascendancy
1 Tamiyo, Field Researcher
1 Flame-Kin Zealot


 僕は毎夜回し続けた。そうさせるだけの魅力があった。あの朝を迎えるまでは。

コメント

nophoto
名無し
2017年4月8日4:27

私は蛇ん詰め脳の動画で貴方を初めて知り、それ以降毎回動画を楽しみにしていた22歳。所謂ミーハーmtgプレイヤー、数多くの視聴者の内の一人です。
動画を見てからというもの、唯々諾々の楽しさ、きらめく願いの可能性に魅了され、ここ2週間ほどはまだ見ぬクソ多色インスタント/ソーサリー(或いは他のカードタイプ)で実用性と面白さを兼ね備えるカードはないか調べる事が一種の楽しみとなっていました。
そして勝手ながら自分なりの改変を加え、実際に紙で対戦してみようと思った矢先に、例の訃報、、、
私の様な競技への参加経験も予定もないFNMプレイヤーですら、そもそも挙動が不可能になったと言う事実はかつて経験した事ない類の落胆でしたから、神戸まで見据えていた生みの親の落胆は想像に難くありません。
これまで貴方が如何程のデッキを作り上げては解体して来た事かは私には分かりませんが、少なくともこの蛇ん詰め脳は、私(とおそらく多くの視聴者)にわくわくと爽快感、そして今となっては幻の、無限の可能性を魅せてくれました。
本当に刹那の様な期間で、大きな足跡を、記録を残す事は叶いませんでしたが、むしろ記憶には強く残っています。
ありがとう!

エスパー王子
2017年4月8日8:44

辛い(確信

MAD PIERO .
2017年4月8日9:56

.

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